大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(ラ)670号 決定

一、民事訴訟法第五三五条第一項に規定する執行力ある正本の交付は、同項の規定によつて明らかなように、債務者がその義務を完全に尽した後になさるべきものであるから、執行力ある正本を債務者に交付する行為は執行完了後のことに属し執行行為の一部ではない。従つて執行吏が本件において抗告人らのいうように、右正本を抗告人らに交付しなかつたとしても、右正本を交付しないから執行が完了していないという主張は、採るをえない。

二、本件の執行行為は前記のとおり建物の明渡であつて、債務者の占有を解きこれを債権者に引渡すという事実的行為によつて行なわれるものであり、この現実的な執行行為が行なわれ建物の占有は債務者の手を離れ債権者の占有に帰属しているのである。従つて、このような現実的な執行行為にあつては、それが債務名義の執行停止中に行なわれたとしても、既に債権者の占有に帰した建物をその意思に反して取り上げこれを債務者の占有に移すについては更らに別個の債務名義を必要とするわけであつて、強制執行の取消決定によつてこれを実現しうるわけのものではないから、建物の占有を債権者に移したことによつて執行手続としては何も残すところはないので、本件明渡の執行は完了したものといわなければならない。

(薄根 元岡 小池)

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